はじめに、入浴時の血圧の変化を見てみましょう。脱衣所で服を脱ぐと、熱が逃げないように交感神経が盛んに働き、血管が縮んで血圧が上がります。湯船に入りお湯につかることで、交感神経が一時的に作用し、さらに血圧が上がります。しかし、身体がお湯に慣れてくると血管が広がって今度は血圧が低下します。その後、脱衣所に出ると寒さで再び血圧が上がります。脱衣所が10℃、お湯の温度が41℃での血圧の変化は、洋服を脱ぐと15mmHg血圧上昇し、お湯につかった直後は更に25mmHg上昇するという報告もあります。
このように入浴時は血圧の変化が激しくなることが分かります。寒さなどで血圧が急激に上昇すると、血管に圧がかかってしまうため、脳出血を起こしやすくなります。湯船に浸かり血圧が低下し、汗をかいて血管内が脱水になると血液がドロドロになります。結果、血管が詰まり脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすことがあり、元々降圧剤を服用している方にとっては、さらにリスクが高くなります。
血圧の急激な変化を起こさないようにするためにも、脱衣所や浴室内は暖房を使用するなどして温めておきましょう。浴室に暖房が無い場合、シャワーで湯船にお湯をためると浴室内の温度が上がります。また、熱いお湯につかると血圧の上昇が激しくなるため、42℃を超えるお湯には入らないように注意しましょう。さらに入浴中は気づかぬうちに汗もかいていることから、入浴前後にしっかり水分補給を行うことも大切になってきます。
日常的に行う入浴でも、場合によっては重大な事故を引き起こすこともあります。ちょっとした工夫がご自身の健康を守ることに繋がりますので、心がけていきましょう。